腰痛は、職業病のなかでも最もよく見られるものの一つだと考えられます。腰痛の概要と予防対策を考えてみます。
職域における腰痛は、荷物を持ち上げたり、腰をひねったりしたときのほか、寒さや冷え、床や階段での転倒、すでにあった腰痛が仕事によって悪化したものなど様々です。
発症様態や原因から、以下のように分類されます。
職域における腰痛
○災害性腰痛(急性型)
作業中の突発的な要因などによって急激に腰部に無理な力がかかっておこるもの
〇非災害性腰痛(慢性型)
突発的な要因によらず、重量物取り扱い作業など腰部に負担のかかる作業に従事することによっておこるもの
また、発症原因は以下のようなものが考えられます。
- 重いものを持ち上げた瞬間、腰をひねる、かがむなどの不自然な動作
- 転倒事故、腰を強く打つなどの外からの衝撃
- 寒冷や冷え、滑りやすい床などの環境要因
- 長時間のデスクワークや立ち仕事など作業要因
- 加齢、肥満、運動不足などの身体的要因
- ストレスや不安など心理的要因
- 元からある腰痛や背骨の疾患などが、作業によって悪化
腰痛の発症や悪化の予防
◎姿勢・動作
- 中腰、ひねり、前かがみ、後ろを向いて体を反らすなどの不自然な姿勢を避ける
- 頸や腰部の不意なひねりを避け、動作時には視線も動作に合わせる
- 急激な動作をとらない
- 同じ姿勢を長時間とらない
◎重量物の取り扱い
- できるだけ身体を対象物に近づけ、重身を低くする。
- 片足を少し前に出し、膝を曲げ、腰を十分に降ろして荷物をかかえる。
- 膝を伸ばすことで立ち上がる。
- 向きを変える時は、腰からひねらず、先につま先の向きを変えてから方向を変える。
- 腰痛ベルトを使用する。
◎長時間の座位による作業
- いすに深く腰を掛け、背もたれに十分あて、足の裏全体が床に接するようにする。
- 膝や足先を自由に動かせる空間をとる。
- 時々立ち上がって腰を伸ばすなど、姿勢を変える。
◎長時間の自動車運転
- なるべくシートを倒さず、胸をハンドルの近くに持っていき膝関節と股関節がほぼ直角になるような姿勢をとる。
- 適度に休息をとり、車両から降りて背伸びなどの軽い運動をする。
◎作業環境
- 寒い場所での作業では、暖房や防寒衣などで適切な温度調整をする。
- 作業場所、通路、備品などがはっきりわかるように十分に照明をする。
- すべりや転倒などを防止するため、床面は滑りにくくし、段差・凹凸もできる限り少なくする。
腰痛は、以上のような作業や作業環境の見直しによって発症や悪化を予防できると考えられます。意識的・継続的に気をつけていくことが大切です。