発達障害傾向が疑われた事例-3

20歳台女性、大学院博士課程を修了後入社し1年目、データ解析・レポート作成業務に従事していた(裁量労働制)。入社3ヵ月目ごろから遅刻が目立つようになり、不眠や抑うつ症状を訴えるようになったため、産業医面談となった。

まず遅刻してしまう理由を尋ねたところ、「決まった時間に出社する意義がよくわからず今一つ納得できない」という趣旨であり、遅刻に関してあまり罪悪感は感じていないようであった。また、「今の仕事が自分に合っているかも疑問に感じている」「自分の能力を発揮できる職場か疑問」ということも理由の一つのようであった。心身症状に関しては、事前情報のとおり不眠や軽い抑うつ症状がみられていた。まだ医療機関には受診していたないとのことであった。この日の面談においては、まず体調を整えることを優先し現状を改善することで合意を得た。

その後、心療内科を受診し「適応障害」の診断の下、通院治療をしながら勤務し、勤怠も改善していた。しかし、最初の面談から約2カ月経過したところで症状が再燃し休職となった。約2カ月間の自宅療養と通院治療にて症状は軽快し、主治医から「復職可能」の診断書が発行されたため、再び産業医面談となった。

症状に関してはほとんど軽快し、不眠も抑うつ症状もほぼ消失したとのことであった。ただし、起床時間が8時半ごろと遅く、定時に出社するには不十分であった。就寝時間も0時前後とやや遅かった。仕事への意欲は感じられていたため、就寝と起床の時間を調整したあとであれば復職可能と判断した。また、裁量労働制ではなく、当初は定時内勤務で残業なしの条件とした。

一方で休職に至った経緯を尋ねたところ、「業務負荷が増えた」「職場の空間が閉鎖的」との返答があった。人事担当者に確認したところ、「業務負荷は抑えていた」「職場は狭いわけでも窓がないわけでもなく、さほど閉鎖的とは考えられない」という回答であった。

この事例は「適応障害」と診断され、二次的に抑うつ状態を呈して休職に至っています。ただ、当初から自分自身を客観視することが乏しく、他罰的な言動がみられていました。勤怠や就業規則にもやや無頓着な傾向もみられていました。復職面談時には「定時出社の自信があります」との発言とは反対に起床時間の調整が不十分であり、定時出社への意識がやや乏しいと感じられました。休職に至った経緯に関しても外部的な要因のみを挙げており、自身にはほとんど要因がないと考えているように見受けられました。人事担当者も同様に感じていたようです。見解は分かれるところかもしれませんが、適応障害に至るベースとして発達障害傾向があったのではないかと考えています。休職・復職を繰り返す可能性もあると考えられ、今後も注意が必要だと思われます。