フォークリフトは、製造業や倉庫・物流などの職場では必ずと言ってもいいほど使用されています。重量物の運搬、商品や材料の移動、積み上げなど用途も色々です。このように、工場などにおいては欠かすことのできない存在ですが、安全対策を怠ると重大な事故につながりかねません。使用頻度が高いだけに事故の発生率も高いといえます。毎年、死亡災害も報告されています。
報告されている事故で一番多いのは「墜落・転落」で、次が「はさまれ・巻き込まれ」となっています。ただ、これらはフォークリフトの爪の上やパレットの上に作業者を乗せるといった主に用途外使用によるものです。
実際に問題となるのは、「激突され(接触・轢かれ)」「転倒」や「(積荷の)落下・飛来」ではないかと思います。私が一番多く報告を受けている例は、「接触・轢かれ」です。そして、職場巡視をしていて危険を感じるのは、「積荷の落下」です。
これまでに経験したフォークリフトの事故で一番重大な災害となったのは、轢かれて下敷きになり重傷を負った例です。この例は、フォークリフトの運転者と轢かれた歩行者の双方の不注意でした。運転者の方は、フォークの積荷で前方の視界が遮られているにもかかわらず前進走行で運行。歩行者の方は、スマートフォンを見ながらの前方不注意でした。積荷の落下については経験はありませんが、不安定な積み上げや過度に高く積み上げる例などを時々見かけます。その他、フォークリフトの燃料のガスボンベを交換する際に、ボンベを支えきれず棚との間に挟まれて骨折した例もありました。
このように、フォークリフト作業では様々な労災が発生する可能性があります。そのため、安全対策が重要となります。
◎フォークリフトの安全対策
- フォークリフトと歩行者の通行場所を分ける。歩行帯を設ける。
- フォークリフトと歩行者の導線が交わる場所では、双方が指差呼称をするなど注意を払う。通行の優先順位を決めておく。
- フォークリフトに回転式警告灯や警報音装置をつけて、視覚的・聴覚的にその位置を把握しやすいようにする。
- 積荷で前方視界が悪い時は、バック走行をする。大型で見やすいバックミラーをつける。
- フォークリフトが作業をしているときは、周囲の作業者は一定の距離を置く。
- スピードの出しすぎ、急発進・急停止・急ハンドルをしない。
- 積荷の梱包をしっかりとする。積み方や重心位置などを決めておく。荷崩れの危険がないか常に注意する。
- ガスボンベなど重量のある燃料を交換するときは、一人で行わず何人かで行う。
- 定期的にフォークリフトの自主点検、運転者の安全講習をおこなう。
最大積載荷重1t以上のフォークリフトは、「フォークリフト運転技能講習」の修了が法令で義務づけられていますが、最大積載荷重1t未満のものは事業者のおこなう「特別教育」の受講が義務付けられているだけです。さらに、自動車のような車検制度はなく、自主検査が義務付けられているだけですので、点検がおろそかになってしまうこともあります。定期的な安全講習・啓蒙活動、自主点検が重要となります。また、構内での作業者や歩行者もフォークリフトに注意を払う必要があります。職場全体での安全意識が大切です。