熱中症

近年の地球温暖化などの影響によって熱中症が増えています。職域においてもしばしば問題となります。その本態と対策についてみてみます。

◎熱中症

高温多湿等が原因となって起こる症状の総称。高温障害。 従来は、症状などの違いによって熱失神・熱痙攣・熱疲労・熱射病の4つに分類されていましたが、現在は、重症度に応じてI度・II度・III度と分類されています。

熱中症のメカニズム

上の図からわかるように熱中症の本態は、「汗の気化熱による体温調節」の阻害と「脱水症」にあるといえます。

◎熱中症の起こりやすい条件

  • 高温・高湿度の環境で最も発生しやすく、7~9月に発生が集中している。ただし、気温・湿度の上昇に体が順化していない5~6月にも多く見られる。
  • 前日より急に温度があがった日
  • 温度が低くても多湿であれば起こりやすい。
  • 室内作業をしている人が、急に外に出て作業した場合。
  • 作業日程の初日~数日間が発症しやすい。
  • 時間帯としては、午前中では10時頃、午後では13時から14時頃に発症件数が多い。

◎暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)

人間の熱バランスに影響の大きい、気温、湿度、輻射熱の3つの要素を取り入れた指数で、
「WBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度」
という計算式になります。
下図のイメージのように、湿度の影響が大きいといえます。このWBGTの値と熱中症の発症数には相関が認められます。一般に湿度・気温ともに高い環境下で、熱中症のリスクが高いといえます。
ただし、溶鉱炉など強い熱源の近くでは、気温や輻射熱は極端に高いのに湿度が低いためWBGTが低くでてしまう傾向があります。だからといって、熱中症のリスクが低いとはいえず、その本態の一つである脱水症のリスクが高くなります。
いずれにしても、発症時の処置や予防対策はほぼ同じといえます。

WBGTのイメージ
熱中症の発症数とWBGTの関係

参考:環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数

◎熱中症の症状

熱中症の症状と重症度

◎熱中症の処置

●Ⅰ~Ⅱ度(熱失神・熱けいれん・熱疲労)

  • 涼しい場所で、衣服をゆるめ、安静に寝かせる。
  • スポーツドリンクや0.1~0.2%の食塩水を摂取。
  • 足を高くして頭を低くし、手足の先から心臓の方向にマッサージする。

●Ⅲ度(熱射病)

  • 至急、医療機関へ搬送する。
  • 応急処置として、ただちに全身を冷却する。

◎熱中症の予防

  • 就労や運動の前に塩分を含んだ水分を摂取する。
  • 発汗によって失った水分と塩分の補給をこまめに行う。
  • 塩分濃度は、体液濃度に近い0.1~0.2%程度が望ましいが、スポーツドリンクなど塩分と糖分を飲みやすく配合した飲み物などでも良い。
  • 高温での発汗時に水分のみを補給し続けていると体液の塩分(塩濃度)が希釈され、症状を悪化させることがあるので注意。
  • 睡眠を十分に取る。
  • 十分に休憩を取りながら作業する。(休憩により体温を十分に下げる。)
  • なるべく日射を避け、帽子などを着用する。
  • 通風を確保する。扇風機の風を作業場所へ向ける。
  • 蓄冷剤を利用するなど、水の気化熱を利用して体温を下げるなどの工夫を行う
  • 一人で作業すると発見が遅れることになりかねないので、複数で作業すると良い。
  • 朝食を抜いてくると午前中に発症することがあるので、きちんと朝食を食べる。作業前の朝礼などで確認したり、啓蒙すると効果的。

以上、熱中症のメカニズムと発症時の処置・予防対策を見てきました。上記の知識は大切なことですが、「こまめに水分をとったり、休憩をしたりできる」「ちょっとおかしいなと感じたらすぐに申し出ることができる」など職場の雰囲気づくりも大切です。根性論などで我慢してしまうような雰囲気は避けたいものです。