自己紹介 ~経歴と産業医活動に対する思い~

医学生時代、産業衛生学や公衆衛生学の授業もありましたが、やはり本流は臨床医学と考えていて、あまり興味はありませんでした。正直なところ、「国家試験対策」のような認識しかありませんでした。

それでも、近隣の事業所への現場実習の時には、案内を担当された方から、自社製品への誇りやものづくりへの情熱を感じたものでした。同時に、安全や衛生の重要性もおぼろげながらに知ることができました。

卒業後は、内科・腎臓内科の一般的な臨床医になり病院勤務をしました。仕事はやはり大変で、過重労働的な側面もありました。自身で選んだ道とはいえ色々と悩むこともあり、心身共に疲弊した時期もありました。ただ、ここでの経験は、生活習慣病や過重労働などに関する保健指導・健康管理をする際に大いに役立つことになりました。

多忙な日々の中、日本医師会の産業医講習の案内が目に入り、受講してみたことが産業医へのきっかけでした。受講してみて、学生時代にはあまり興味がなかったことに強い関心を持つようになりました。特に有害物質や有害エネルギーとその対策に関する内容には関心を持ち、実地の研修もとても印象的でした。

産業医資格取得後、大手人材派遣会社の専属産業医として勤務する縁に恵まれました。しかしながら、予想に反して現場で求められたことは、学生時代の産業衛生学や産業医講習で習った内容とは違ったものでした。その当時は、ちょうど過労自殺などが相次ぎ、メンタルヘルス対策が真っ盛りになりつつある時期だったのです。改めて勉強のしなおしでしたが、様々な貴重な事例に触れることができました。また、会社という組織を知ることや、労働衛生コンサルタント資格を取得することもできました。

その後、製薬会社研究所に専属産業医として勤務しましたが、やはり業務の大半はメンタルヘルス対策でした。ただ、いちばん関心を持っていたのは、現場の職場巡視とそれに基づいて安全衛生対策を考えることでした。とてもやりがいを感じていました。

心療内科クリニック勤務の後、病院の健診部門に移ってからは、製造業を中心に多くの嘱託産業医業務を経験することができました。そこで感じたことは、工場設備などハード面での対策は進んでいても、作業方法などのソフト面での対策が不十分であるということでした。特に中小規模の事業場では、その傾向が強いと感じています。

今後は、過重労働対策・メンタルヘルス対策に加えて、製造現場などでの作業管理の見直しも重要です。新しい問題への対策と古くからある問題への対策、その両者に力を入れていきたい考えています。