業務起因性うつ病の休職・復職例

46歳男性、金属製品メーカー勤務。25歳で入社、40歳で課長に昇進、製品品質管理業務に従事していた。勤務態度は良好。責任感が強く、仕事を抱え込むタイプであった。

課長に昇進して約5年後の11月頃から、気分の落ち込み、意欲低下、不安焦燥感、不眠などの症状を認めるようになった。次第に業務に支障をきたすようになったため、心療内科を受診、「うつ病」と診断された。発症の原因は、業務負荷によるものであり、休養が必要と判断された。このため、同月末から休職となった。

休職中は、自宅療養し、通院による治療が行われた。治療内容は、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入剤の内服投与であった。休養・内服治療により症状は徐々に改善した。翌年の7月初旬に主治医より「復職可能」との診断書が発行された。「ただし、業務配慮が必要」の付記があった。

これを受け、会社担当者が本人と復職に向けた調整を行い、8月初旬に産業医に相談があった。しかし、この時点では、精神症状の改善は認められるものの、本人からかなりの時短勤務や業務内容制限などの希望があり、会社の就業規則上の復職条件を満たすものではなかった。このため、1か月程度の生活リズム調整と通勤訓練、日中は図書館に通うなどの仕事に向けたシミュレーション、うつ病に至った業務上の原因の内省などを行ってもらうことにした。

前述の助言に取り組んでもらったのち、8月下旬に本人と産業医面談を行った。まず、疾病性の点としては、抑うつ症状などはほぼ消失しており、睡眠状態も良好であった。生活リズムも整っており、日中の活動性もよく、通勤訓練もよくこなされていた。事例性の点でも、体調不良に至った原因が「性格上、頼まれたことを断れず、無理してなんでも引き受けてしまう」「部下に振り分けるべき仕事も自分でやってしまう」「そのために長時間労働をしてしまう」という点にあることに気づき、復職後に改善すべき点についてもよく考えられていた。

以上の点から復職は可能と判断し、9月初めから職場復帰した。当初は定時内勤務とし、業務負荷も徐々に増やすことにした。症状が再発することもなく、従前のような仕事の仕方も改善されていた。数か月後には、通常勤務に戻った。

この事例は「業務起因性のうつ病」としては、ほぼ典型的な例ではないかと考えられます。休職時の症状が強かったことなどから、精神症状の改善に約7か月とやや時間を要しましたが、症状改善後から復職までの取り組みが良好であったため円滑に復職できたと考えられます。