「転倒」とは、文字通り「転ぶ」ことであり、「つまづき」「滑り」などによって「倒れた」場合をいいます。この転倒によっておこる災害は、「転倒災害」と呼ばれます。
厚生労働省の「労働災害発生状況」の報告をみると、平成30年の事故の型別死傷災害の約25%が「転倒災害」によるもので、労働災害の原因として最も多いといえます。
しかし、「転倒」は、その発生件数の多さから「ごくありふれたもの」として、「ちょっと転んだだけ」「急いでいたため」などと軽視されがちです。そのため、十分な対策もなされず、繰り返されることになります。労働災害に占める割合もおおむね20~25%で推移しており、減少しているとは言えません。
転倒災害の主な原因
転倒の原因としては、「すべって」が最も多く、次いで「つまづいて」「自分の反動で」が多くなっています。以下のような作業環境や作業行動が主な要因と考えられます。
- 作業環境 滑りやすい床、つまづきやすい障害物、足元が見づらい照明など
- 作業行動 走る、あわてる、よそ見など
また、以下の「転倒災害被災者の年齢別比較」を見ると高齢になるほど被災数が多く、「加齢による身体機能の低下」も一因となっていることがわかります。
転倒災害防止対策
以上の原因から、転倒災害の防止には 次のような点に留意する必要があると考えられます。
- 通路や床面なの4S(整理・整頓・清潔・清掃)を心がける
- 段差をなるべく解消する
- 電源コードやLANケーブルなどひっかけやすいものを床面に露出させない
- 足元の見やすい照明にする
- 滑りやすい床には滑り止め加工や滑り止め塗料の塗布などを行う
- 作業靴は滑りにくいものを使用する
- 走らない、慌てない、よそ見しないなど行動面を意識する
- 階段の昇降時には手すりを持つ
- 加齢に伴う身体機能低下を意識し、無理をしない
作業環境の改善も大切ですが、それに加えて行動面の意識改善が必須です。行動面の改善がなければ、いくら作業環境を改善しても転倒災害は減少しないと思われます。