苛性ソーダによる薬傷

苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)によるアルカリ熱傷の事例です。

被災労働者は、タンクローリーから工場内の貯蔵タンクに苛性ソーダを注入する作業をしていました。作業は、貯蔵タンクのパイプラインとタンクローリーの送出管を接続してサイフォン式に注入します。注入終了後には空気を圧入し、パイプライン内の残液を排出します。しかし、この排出作業を行ったものと勘違いして、接続を解除したために残液の飛沫をかぶって被災しました。

被災後ただちに作業服を脱いで、大量の流水で30分近く洗浄したのち、救急車で付近の病院に搬送されました。幸い比較的軽い薬傷で済みました。

苛性ソーダは、工場廃液の中和など様々な事業場で使用されていますが、強アルカリ性で腐食性が強く、重大事故につながることもあります。一般的にアルカリ熱傷は、酸によるものより重症化するといわれています。アルカリは皮膚の深部まで入り込み、脂肪の酸化やたんぱく溶解して、皮下組織を腐食させるからです。

応急処置は、苛性ソーダの付着した衣類を直ちに脱がせ、大量の流水で15分以上洗浄することです。その後、ホウ酸水や塩化アンモニウム溶液で中和するとよいですが、洗浄前に行うと中和熱を発するため危険です。まずは、しっかりと洗い流すことが重要です。

予防対策は、保護メガネ、ゴム長靴、ゴム手袋、ゴム前掛けなどの保護具をしっかりと着用することです。作業手順をしっかりと確認して、遵守することも重要です。