長時間労働などの過重労働は、生活習慣病などの基礎疾患を通常の自然経過よりも早く悪化させる要因になると考えられています。このため、脳・心臓疾患などの発症リスクを高めます。
過重労働が原因で発症した健康障害は、業務との因果関係が認められて労災補償の対象になる場合があります。脳・心臓疾患や精神障害による過労死・過労自殺の認定基準は、近年の改正でその評価期間が6か月に延長されるなど厳しくなっています。さらに時間管理に関しては、働き方改革に伴う法令改正によってより厳格さが求められています。
また、使用者には労働契約に伴って労働者の安全・健康に配慮する義務、すなわち安全(健康)配慮義務が発生します。労災事故や健康障害の予防措置を講じていない場合には、安全(健康)配慮義務違反として損害賠償責任を問われることもにもなりかねません。
時間外労働については、一般的に考えられている「残業」と法律上の「時間外労働」が異なっている場合があるので注意が必要です。いわゆる「残業」というと、会社で定めた「所定労働時間」を超える時間のことと考えるかもしれませんが、法律上の「時間外労働」とは、労働基準法で定められた「法定労働時間」(1日8時間・1週40時間)を超える時間のことをいいます。時間管理もこの基準で考えることになります。
過重労働による健康障害の防止のためには、時間外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進などの対策が重要です。また、やむを得ず長時間にわたる時間外労働を行わせた場合は、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが必要です。
しかしながら、過重労働対策は単なる時間管理だけでなく、仕事の総量・効率・配分など総合的な対策が重要と考えられます。