発達障害(またはその傾向)と職場 ~その特徴と対策~

こちらのエントリーでは、主に「発達障害もしくは発達障害傾向」が疑われる事例とその相談が増えている背景を考えてみました。今回は、その特徴と対策を考えてみたいと思います。

◎発達障害傾向に伴う職場での主な問題点

職場における発達障害傾向の特徴

おおよそ以上のような傾向になると思いますが、もちろん、すべてがみられるわけではなく、程度も軽いものから深刻なものまであります。また、それが発達障害によるものであるかを明確に示すことは困難で、単に「その人の性格傾向・特性」である可能性もあります。発達障害とは、濃淡(グラデーション)をもった連続性(スペクトラム)のあるものなのです。個性といえるレベルから病的と感じるレベルまでさまざまでもあります。

◎職域での対策
「発達障害もしくはその傾向」を持った人は、上記のような職場での問題のほかに、コミュニケーションや業務指示への対応、業務への不全感などから「抑うつ状態」や「適応障害」などの二次的な精神障害を併発することもあります。職場での対応の基本は、やはり「事例性と疾病性」を分けて考えることになります。現に症状として現れている事象などは「疾病性」ととらえて、外部の医療機関(主治医)や産業保健職(産業医や保健師など)が対応し、職場で困っている事象などの「事例性」は、会社側の担当者が対応することになります。しかしながら、「業務起因性のうつ病」などと違い、医療的対応で「疾病性」が消失したからと言って「事例性」まで解決するとは限りません。二次的な症状を投薬などの治療で改善できても、ベースにある「発達障害傾向」は残るため、職場での問題は簡単には解決しないことが多いのです。
このため、従来型のメンタルヘルス対策に加えて「継続的な業務管理」の重要性がより高くなります。この場合、「発達障害傾向」の問題点だけでなく、その適性や利点も考える必要があります。

従来型のメンタル不調対応
発達障害傾向への対応

◎発達障害傾向の持つ主な利点とそれを考慮した対策

発達障害傾向の利点

以上の傾向から、各々の適性に合った仕事であれば通常より良好なパフォーマンスを生む可能性があります。また、特定の領域で才能を発揮する可能性もあります。
また、以下のような点に配慮すれば改善すると思われます。

  • 指示命令は具体的・明確に行う
  • 対人交渉など高度なコミュニケーションを必要とする業務は避ける
  • ルーチンワークや自己完結する業務を担当させる
  • 一つの業務(得意な業務)に集中させる
  • 急な予定変更や割り込み業務は避ける
  • 定期的に業務遂行状況を確認する

◎課題と難しさ
「発達障害傾向」のある事例への対応は、これまでと違い「業務管理」を中心とした継続的できめ細かい対応が必要になります。「発達障害そのもの」をなくそうとするより、それに起因する「不適応状態」を改善しようとする取り組みが必要になります。
一方でこれらの対応は、周囲で一緒に仕事をする労働者や管理職の負担を増大させます。職務や業務負荷配分の不公平感を生む可能性も大きいといえます。多大なリソースを要するため、中小規模の事業場では対応が難しいケースも考えられます。
しかしながら、人口に占める割合の多さ、今後顕在化する数も多いと予測されること、人手不足解消・人材活用の必要性などから対策はますます重要になると考えられます。